麻布台・狸穴町周辺エリア:国際色豊かな歴史と現代が交錯する東京の特別な街
東京港区の中でも特に個性的なエリア「麻布台」「麻布狸穴町」「麻布永坂町」は、江戸時代から現代まで連綿と続く歴史の重層性と、国際色豊かな文化が見事に融合した稀有な場所です。武蔵野台地の高台に位置するこの地域は、坂の街として知られ、一歩歩くごとに新たな発見と驚きに出会える魅力的なエリアです。


麻布台:大再開発で生まれ変わった新たな顔
麻布台ヒルズの誕生
2023年11月、麻布台に新たな象徴「麻布台ヒルズ」が誕生しました。高さ約330メートルのタワーを中心とした大規模な複合施設で、30年以上にわたる再開発事業の成果として完成したこの街は、オフィス、住宅、商業施設、文化施設が一体となった新しい都市の形を提案しています。
江戸時代には大名屋敷が立ち並んでいた麻布台3丁目周辺は、現代においても「住む・働く・楽しむ」が共存する特別な空間として生まれ変わりました。港区公式情報によると、この再開発事業は約8.1ヘクタールという広大な敷地で実施され、防災面でも大きな向上を図っています。
歴史的背景:江戸の大名屋敷から現代まで
麻布台一帯は江戸時代、武蔵野台地の安定した地盤を活かして多くの大名屋敷が建設されました。明暦の大火(1657年)以降、特に大名屋敷や武家屋敷が集中するようになった地域で、現在の国際色豊かな街並みの基礎となっています。
麻布狸穴町:「まみあなちょう」と読む不思議な地名





地名の由来:アナグマの穴の物語
港区公式資料によると、地名の由来には諸説ありますが、最も有力なのは次の説です:
この地に生息していた「猯(まみ)」と呼ばれるアナグマがタヌキに似ていたことから、後に狸の字と混同されて「狸穴」と表記されるようになったというもの。「まみ」は本来アナグマのことで、雌の狸という意味ではありません。谷あいの土地で古くから木立も繁り、こうした動物が棲息するような環境だったのでしょう。
狸穴坂:江戸時代からの古い道
麻布台2丁目と麻布狸穴町の間には「狸穴坂(まみあなざか)」があります。港区の坂情報によると、この坂の由来は「まみとは雌ダヌキ・ムササビまたはアナグマの類で、昔その穴が坂下にあったという。採鉱の穴であったという説もある」とされています。江戸時代の古地図にも記載されている歴史ある坂道です。





麻布永坂町:港区で最も高所得な超高級住宅街
著名人が守った地名
麻布永坂町は、住居表示に関する法律が成立した1962年以降も、歴史ある町名が保持されている貴重な地域です。これは、この地に住む著名人たちの強い働きかけがあったからです。特に映画監督・脚本家の松山善三(高峰秀子の夫)が中心となって旧町名の存続運動を展開しました。
麻布永坂町の入り口は飯倉片町の交差点を新一の橋方向に永坂を下って行くとすぐに、まあ、普通に車で走っていればなにげなく通過してしまうようなところにあります。
ここを、入っていくとまた警視庁の警備の方が、いらっしゃいます。ご苦労様です。
で、ここを、左に入っていって、植木坂につながっていくのですが、すぐ右に曲がるとひっそりと木々に囲まれた、とても、歓楽街六本木の近所とは思えない静寂を感じる路地があります。
孫正義氏の大豪邸
麻布永坂町には、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏の壮大な邸宅があります。詳細な記録によると、この邸宅は元々三井財閥・三井十一家のうちの「三井永坂町家」の邸宅で、現在は敷地面積約960坪、延床面積約810坪の規模を誇る大豪邸となっています。
特徴的なのは、民間人でありながらガードマンBOX(警備室)を設置し、警備員が常駐している点です。大臣などの要職に就いている人の自宅には仮設交番が置かれることがありますが、民間人でこのような警備体制を取っている邸宅は珍しく、その規模の大きさを物語っています。
国際的な隣人関係:ロシア大使館とアメリカンクラブと日本経緯度原点
歴史が生んだ興味深い立地
麻布台周辺で最も興味深い光景の一つが、ロシア大使館と東京アメリカンクラブの隣接です。この配置はなにか、政治的な背景もあるのでしょうか。なにかご存じの方はコメントください。
飯倉交差点のランドマークNOAビルからロシア大使館にむかう手前
飯倉交差点から、ロシア大使館にむかう手前の路地を曲がりますと二つぐらいお寺があり、間の路地から東京タワーが見えて、その奥に東京アメリカンクラブの正門があります。
ロシアからすれば、まさに「嫌がらせのような立地」とも言える配置で、冷戦時代の緊張関係を象徴する興味深いロケーションとなっています。
そして、これまた、高級感に圧倒されます、アメリカンクラブの正門と入り口を共有しているように見える麻布台パークハウスです。
東京アメリカンクラブ
1928年設立の東京アメリカンクラブは、麻布台の高台の地に瀟洒な建物を構える会員制クラブです。広大な敷地には以下の充実した施設を備えています。
鼠坂上部からアメリカンクラブが見えます。圧倒的なクラブ感ですね。セレブリティ感にクラクラします。
- 複数のレストラン(アメリカン料理中心)
- 図書館
- ボーリング場
- フィットネスクラブ
- プール(中央のプールを両側から挟む建物配置)
- テニスコート
日本経緯度原点
アメリカンクラブの奥の行き止まりのところに日本の原点があります。背景に写っているのは、前述の麻布台パークハウスですね。
日本経緯度原点は、日本における地理学的経緯度を決めるための基準となる点であり、測量法施行令(昭和24年政令第322号)第2条第1項において、その数値が定められています。そして、ロシア大使館と東京アメリカンクラブのさらに奥に進むと日本経緯度原点があります。日本国内の測量の基準点で東京都港区麻布台二丁目に位置します。国土地理院ホームページ参照




麻布の坂文化:起伏に富んだ地形が生む独特の街並み
坂の街・麻布の魅力
麻布エリアは「坂の街」として有名で、それぞれの坂に歴史と物語があります。狸穴坂以外にも多くの特徴的な坂があります:
- 永坂:麻布永坂町の名前の由来となった坂
- 植木坂:植木屋があり菊人形を始めたという坂
- 鼠坂:細長く狭い道を江戸の人はねずみ坂と呼んでいたらしいです。実際細く、車では下れません、人と自転車が通れるだけのホントに狭い坂で、下ったところに狸穴公園があります。
- 鳥居坂:江戸時代、大名や武家屋敷が並んでいた坂、六本木五丁目交差点から麻布十番方向に下っていく坂で、下ったところが鳥居坂下交差点ですね。で、その先が元麻布から仙台坂に抜けていける暗闇坂ですね。
これらの坂道は、高台と低地が複雑に入り組む地形の中で、それぞれ異なる表情を見せる街の魅力を演出しています。坂の上と下では町の表情も変わり、高級住宅地もあれば、庶民的な商店街もあるという多様性が麻布の大きな特徴です。
植木坂下にはこんな碑も建てられておりました。島崎藤村さんもこの地にお住まいだったとのことです。
江戸時代からの歴史的背景
大名屋敷の時代
江戸時代の麻布は、武蔵野台地の安定した地盤を活かして多くの大名屋敷が建設された格式高いエリアでした。明暦の大火(1657年)以降、江戸の人口増大とともに、特に大名屋敷や武家屋敷が麻布周辺に集中するようになりました。
各藩の江戸屋敷の内、藩主が居住し政務を取り扱う上屋敷等は、「御殿空間」と呼ばれる中央の御殿や庭園などからなる特別な空間として構成されていました。現在の麻布台周辺の広大な敷地や緑豊かな環境は、こうした大名屋敷時代の名残を感じさせます。
明治維新後の変化
明治維新後は大名屋敷跡地を大使館用地として提供することになり、大名屋敷が多かった港区に大使館が集まることになりました。これが現在の国際色豊かな麻布の基礎となっています。


国際色豊かな現代の麻布
大使館街としての顔
現在、都内には120もの大使館が配置されていますが、そのうち港区内には半数以上になる60以上の大使館があり、さらに麻布には40以上もの大使館が集中しています。これにより、街中にはインターナショナルスクールが多く点在し、多様な文化が共存する国際色豊かな環境が形成されています。
代表的な大使館としては以下があります:
- ロシア連邦大使館
- イタリア大使館(忠臣蔵の舞台となった大石主税良金ら十士切腹の地)
- ノルウェー大使館
- スウェーデン大使館
- フィンランド大使館
新旧の調和
麻布台ヒルズの完成により、最新の都市機能と歴史ある街並みが見事に調和した景観が生まれました。江戸時代の大名屋敷の名残を感じさせる緑豊かな環境と、21世紀の最先端建築が共存する稀有な空間となっています。
特に注目すべきは、再開発に際して300名を超える権利者とともに議論を重ね、30年超の歳月をかけて実現したという点です。単なる開発ではなく、地域の歴史と文化を尊重した街づくりが行われています。
アクセスと周辺情報
交通アクセス
麻布台周辺へのアクセスは以下の通りです:
- 地下鉄日比谷線・大江戸線:六本木駅から徒歩約10分
- 地下鉄南北線:六本木一丁目駅から徒歩約8分
- 地下鉄南北線・大江戸線:麻布十番駅から徒歩約15分
麻布台ヒルズでは、六本木一丁目駅との地下接続通路も新設され、アクセス性が大幅に向上しています。
周辺の見どころ
- 麻布台ヒルズ(商業施設・文化施設)
- 狸穴公園(東麻布住人ご用達の憩いの場であり、公園内には狸穴稲荷大明神が祭られております。)
- 各国大使館建築
- 歴史ある坂道群
- 麻布十番商店街
まとめ:時代を超えて愛され続ける麻布の魅力
麻布台3丁目、麻布台2丁目、麻布狸穴町、麻布永坂町は、それぞれが独特の個性を持ちながらも、全体として調和のとれた魅力的なエリアを形成しています。
「狸穴(まみあな)」という地名に込められたアナグマの穴の物語、孫正義氏の豪邸に象徴される現代の成功者たちの住まい、そしてロシア大使館とアメリカンクラブという国際政治の縮図まで、この地域には東京の多面性が凝縮されています。
坂道を歩きながら、江戸時代から現代まで連綿と続く歴史の重層性を感じ、国際色豊かな文化に触れることができる麻布台周辺は、東京でも特別な体験ができる貴重なエリアといえるでしょう。新しく生まれ変わった麻布台ヒルズとともに、この地域の魅力はさらに深まり続けています。
歴史と現代、和と洋、伝統と革新が見事に調和したこのエリアは、まさに東京の縮図として、今後も多くの人々を魅了し続けることでしょう。